
コーヒーと並んで嗜好飲料として歴史が古いのが「お茶」です。その呼び名は、世界的に見ると「チャ」系統のものと「テー」系統のものに分類されます。これは、それぞれの広東語での呼び名であった「cha」と福建省廈門(アモイ)地方の呼び名であったテー「te」に由来するとの説が有力です。またチャは陸路で、テーは海路でそれぞれ広がっていったとも言われています。
ここではお茶の木の概要と世界的に広く知られる代表的な茶の産地とその特徴についてご紹介します。
お茶の木は、ツバキ目ツバキ科ツバキ属の常緑樹(学名:Camellia sinensis:カメリアシネンシス)です。
原産地は中国南部とされていますが確かなことはわかっていないようです。中国や日本で栽培されている1m前後の低木と、インドやスリランカなどで栽培されている8~15m程度の高木の二種類に大別されます。
茶の木が育つには、霜が降りないこと、年間を通して雨が降ることなどが条件です。
お茶にはいくつかの分類方法がありますが、その製造方法によって分類され、世界的に広く受容されているのが「六大分類」です。1978年中国安徽農業大学教授の陳椽(ちんてん)氏によって提唱されました。発酵の種類と程度によって分けられているといえますが、その茶葉の外観(色)によって、「緑茶」「黄茶」「白茶」「青茶」「紅茶」「黒茶」に分類されます。
緑茶 | 緑茶
発酵させないお茶です。中国というとすぐに烏龍茶を思い浮かべますが、中国において最も飲まれているお茶です。発酵をさせないために、一部の地域を除いて、日本の緑茶は主に蒸す(蒸青という)のに対し、中国では釜で炒ることが多いようです。 |
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黄茶 | 黄茶
発酵度が低いため緑茶に似ていますが、独特の風味があり、水色(すいしょく)が黄色です。中国でも生産量が非常に少ないお茶です。 |
白茶 | 白茶
「不炒不揉(ふいふじゅう)」といわれ、茶葉を揉むことも炒ることもなく、軽度の発酵の後で日干しにして乾燥させて作ります。新芽には白いうぶ毛のようなものがある品種が多いことから白茶の名前があります。 |
青茶 | 青茶(一般的に烏龍茶)
日本人にもすっかりお馴染みの烏龍茶は青茶です。茶葉の酸化発酵の程度は10~80%程度で半発酵茶に分類されます。主要産地は中国福建省(ふっけんしょう)、広東省と台湾で、それぞれ品種が大きく異なるため、ミンペイ烏龍(福建省:武夷岩茶など)、ミンナン烏龍(福建省:鉄観音など)、広東烏龍、台湾烏龍(凍頂烏龍茶)を四大烏龍茶とする場合もあります。 |
紅茶 | 紅茶
ほぼ完全に発酵させたお茶です。発酵ゆえに赤く濃い水色(すいしょく)と複雑な香りが特徴です。特に風味に特色のある中国の「祁門紅茶」、インドの「ダージリン」、スリランカの「ウヴァ」は世界三大紅茶と呼ばれています。 |
黒茶 | 黒茶
中国では緑茶、紅茶に次いで多く生産されています。茶葉を堆積させ、菌を加えて発酵させるため、他の発酵茶に比べ独特の風味があります。発酵度が高いため茶葉は暗褐色で、黒茶の名があります。 |
主に日本、中国、台湾、インド、スリランカといった国で作られています。
産地名をクリックしてみてください。
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品種:龍井茶(ろんじんちゃ)
分類:緑茶
浙江省杭州で栽培される中国を代表する緑茶です。もともとは杭州の西湖の西にある龍井村で産出されたことから、この名前があります。特殊な釜で葉を押さえるように釜煎りしながら揉みます。中国では「四絶(色、形、味、香すべて絶品)」といわれています。
品種:武夷岩茶(ぶいがんちゃ)
分類:青茶(いわゆる烏龍茶)
福建省の武夷山(ぶいざん)で栽培される青茶です。木が岩山に生育していることから岩茶と呼称されます。独特の香りをもち、甘みがあります。自生しているもののほかに、接木から作られるものもあります。
品種:鉄観音(てっかんのん)
分類:青茶(いわゆる烏龍茶)
福建省南部の安渓(あんけい)を中心に栽培される青茶です。茶畑は一年中雲霧に包まれる海抜1000mもの山々に段々畑のように広がっています。黄金色の水色(すいしょく)で、芳醇な味と香りが特徴です。
品種:白毫銀針(はくごうぎんしん)
分類:白茶
福建省の建陽を中心に栽培される白茶です。茶の木から、枝先についた新芽を中心に集めたものです。「白毫」とは白い産毛のことで、新芽にびっしりと産毛が生えており、その形状が銀の針のようなことからこの名があります。香り・味わい・水色(すいしょく)ともに上品で後味が甘いのが特徴です。
品種:祁門紅茶 (きーまんこうちゃ)
分類:紅茶
安徽省祁門で栽培される紅茶です。一番の特徴は香りで、その芳しさは、しばしば蘭の花に喩えられます。味は、しっかりとしたコクがあり、濃厚で、甘みが口に広がります。インド産のダージリン、スリランカ産のウヴァと並んで、世界三大紅茶の一つに数えられています。
品種:普洱茶(ぷーあるちゃ)
分類:黒茶
雲南省南部を原産地とする黒茶です。酸化発酵を止めた緑茶を、コウジ菌で発酵させます。この工程を後発酵と呼び、発酵期間が長くなるほど味はまろやかになり、高級品とされます。発酵による独特の味と香りがあります。
品種:君山銀針(くんざんぎんしん)
分類:黄茶
湖南省北部の洞庭湖の中にある君山島で採れる茶葉から作られた物が起源とされます。君山銀針は緑茶タイプと黄茶タイプの2種類がありますが、黄茶は高級で、生産量の少ない貴重品です。酸化がゆっくりと行われることから、デリケートな味わいと香りが特徴です。
品種:凍頂烏龍茶(とうちょううーろんちゃ)
分類:青茶(いわゆる烏龍茶)
19世紀中ごろに大陸から茶の苗が持ちこまれ、台湾の凍頂山で栽培されたことがはじまりとされています。台湾を代表するお茶で、清らかな味と、花のような香りが際立っています。また爽やかな甘みのある後味が特徴です。
品種:アッサム
分類:紅茶
インド北部のアッサム地方で収穫されます。濃厚な味と香りがあり、くせのないコクがあるため、ミルクティーにも適しています。
品種:ダージリン
分類:紅茶
インド北部のヒマラヤ山系高地で収穫されます。秀でた特徴ある香りから「紅茶のシャンパン」との別称があります。ストレートでもまたミルク入りでもおいしく飲めます。世界三大紅茶の一つです。
品種:ニルギリ
分類:紅茶
インド南部でブルーマウンテンと呼ばれるガッツ山脈で収穫されます。柔らかな味と香りですが、ストレート、レモン、ミルクティーなどいずれにも多用されます。
品種:ウヴァ
分類:紅茶
セイロン島南東の高山地帯で栽培されています。水色(すいしょく)は明るい鮮紅色で、カップに注いだときに見られる、内側の縁に浮かびあがる金色の輪はゴールデンリングと呼ばれます。渋味を伴う芳醇な風味と、甘い花のような香りをもちますが、飲んだときメントール香を感じられるものが特に高品質とされます。
品種:ヌワラエリヤ
分類:紅茶
セイロン島中央の高山地帯で栽培されています。水色(すいしょく)は淡い橙赤色で、緑茶に似たさわやかな香気を持ち、優しく穏やかな味わいが特徴です。ストレートが好まれる紅茶です。
品種:ディンブラ
分類:紅茶
セイロン島中央の高山地帯で栽培されます。水色(すいしょく)は上品な橙色で、バラのような香気を持ち、爽やかな渋味が特徴です。
品種:静岡茶
分類:緑茶
鎌倉時代に聖一国師が、中国から持ち帰った茶の種を足久保(現在の静岡市)に蒔いたのが静岡茶の始まりとされています。現在生産量日本一を誇る緑茶の一大産地です。生産の多くは煎茶で、南部の牧ノ原台地・菊川・掛川は深蒸し茶が多く、川根では浅蒸し茶が多く生産されています。
品種:宇治茶
分類:緑茶
明恵上人が宇治の地へ茶の種子を蒔いたことに始まるとされる歴史的な銘茶です。宇治市周辺部を中心として玉露をはじめ、抹茶原料の碾茶の生産量が多く、知名度は日本随一です。甘味・旨みが多く、上品な香りが特徴です。
品種:八女茶
分類:緑茶
明国より帰国した学僧、栄林周瑞(えいりんしゅうずい)が地元の庄屋に持ち帰った茶の実を分け与えたことが発祥とされています。八女市とその周辺を中心 に、品質の良い玉露や高級煎茶が栽培されています。玉露の生産量は日本一ですが、煎茶にも玉露のような濃厚さと甘味が感じられます。