大沼:アサヒ飲料は、2009年より環境に関する出前(出張)授業を行っています。2018年からは、授業内容をさらに充実させ、子どもたちが主体的に水や地球環境について深く考える『「三ツ矢サイダー」 水の未来と環境教室 ~こどもSDGsスクール~ 』(※以下「三ツ矢出前授業」)に刷新して実施しています。水や地球環境についてグローバルな視点で考え、未来の笑顔のためにできることを話し合い、自ら考え行動する大切さを学ぶ授業です。そして講師として派遣されたのが…。
稲垣:私、稲垣と小角くんです。当社は清涼飲料メーカーとして幅広いお客様と接点を持つ企業です。我々の持つ「三ツ矢サイダー」を題材として、小学生に対して「三ツ矢サイダー」に使われる「水」へのこだわりや、水や地球環境について自分事として理解してもらうことができる。すると、世の中のあらゆるものが繋がり、循環していることも知ってもらうことができる。とても魅力的な企画だと思いました。
小角:私は大学時代、街づくりや環境問題といったことを学んでいました。現在は営業として日々業務に勤しんでいますが、社会人になってもそういったことに関わりたいと思っていました。そんな時に授業に参加する社員の募集があったので、「これだ!」と思って応募しました。
大沼:そうだったんですね。確かに、いま大学で環境問題等について学んでいる学生さんは、自分の研究内容を活かす就職先を探していると思いますが、アサヒ飲料で、小角さんのように自分のフィールドを広げながらそれらに関わっていくのも選択肢のひとつになり得ますね。
稲垣:普段仕事をしていると、実はお客様と直接関われる機会ってそんなにないんです。お客様と接点を持つことで学べることが沢山あるので、これはチャンスだと思い私も自分から手を挙げ参加しました。
大沼:ちなみに私の所属するコーポレートコミュニケーション部が、「三ツ矢出前授業」の事務局をしていまして、当日のプログラムの作成や参加社員へ事前研修などを行っています。講師となる社員の皆さんが学習の目的や価値を理解したうえで、授業当日臨めるようにサポートしています。
小角:この「三ツ矢出前授業」は、講師となる社員二人一組で小学校を訪れます。本番の一か月前に講師が選ばれて、1週間から10日ほど前にオンラインで事前研修が行われました。
大沼:事前研修では、当社が授業を行う目的などを改めて参加する社員の皆さんと共有します。また、小学校の貴重な授業の時間を使わせてもらうので、学校や子どもたちが社員に期待していること、また、それに応えるには、どういった対応が望ましいのかと、あとは全体の流れを確認します。そのような研修に2時間ほどかけ、当日までにプログラムの内容や資料に目を通してもらい、各自練習やシミュレーションを行ってようやく授業本番となります。
稲垣:事前研修は2時間ほどでした。それほど堅苦しい内容ではありませんが、当日すべきことをしっかり理解させてもらえるので、特に不安はありませんでした。
稲垣:そして授業当日です。知らない大人がいきなり来て「SDGs」や「環境保全」と言っても、なかなか頭に入ってこないかなと思ったので、授業が始まる前に、流行っているアニメの話などで心の距離を縮める作戦を実行しました。授業を行う社員がチームとなって、子どもたちの緊張をほぐせるよう心がけました。
小角:私はそこまで気を回せなかったんですが(笑)、話し出すと子どもたちは素直に聞いてくれたので良かったです。先ほど、(普段の営業の仕事の中では)最終消費者である「お客様」と直接対話する機会があまりないという話がありましたが、こうして子どもたちが笑顔で当社の「三ツ矢サイダー」や「カルピス」などを飲んでくれているんだな、と思ったら少しこみ上げるものを感じました。
稲垣:私の授業でもっとも盛り上がったのがグループディスカッションです。授業の中で、安心・安全な飲料水に恵まれない人が世界中にたくさんいることを学ぶため、水を使った地球環境保全について自分たちにできることを自由に発想してもらいました。子どもたちから、”日本は下水道が発達しているから世界中から下水を集めて浄化して世界にきれいな水を届けたらどうだろう”という意見が出ました。環境保全という難しいテーマですが、子どもなりに真摯に考えてくれたので、とても達成感を得ることができました。
小角:私の参加した授業で盛り上がったのが、ろ過実験です。オレンジジュースがろ過装置を通って透明になる瞬間の子どもたちの驚いた表情が印象的でした。さらに、なぜ透明になったのか?と自ら考え発表していました。「三ツ矢出前授業」がこうした場を提供していることに意義を感じましたね。
大沼:終盤になると、ますます子どもたちに積極性が出てきたり、あるいは笑顔が明らかに違ってきたりするんです。非常に興味深かったですね。大人は知らないことに出会うと、ちょっと消極的になるときもありますから、子どもたちの純粋な好奇心や積極性には驚かされますね。彼らの姿勢から、私たち社員が気づかされることがたくさんあります。
稲垣:授業の最後に、「三ツ矢サイダー」で乾杯するんです。コップに「三ツ矢サイダー」を注いで、テーブルに持っていくのですが、それでもうすごい拍手喝采なんですよ。“この授業で学んだ「三ツ矢サイダー」です。磨かれた水でつくられたサイダーで乾杯!”をしたときの、教室の一体感はすごいです。「あ、やっぱり僕たちが売っている商品は、こんなに喜ばれているものなんだな」って思えて、本当に嬉しいです。
小角:気付きますよね、「三ツ矢サイダー」の価値に。こんなに飲みたいと思ってもらえるのか、こんなに笑顔で飲んでもらえるのか、と。喜ぶ子どもたちの顔を見ていると、アサヒ飲料でもっと頑張ろうと思いました。
大沼:あの瞬間は衝撃が走りますよね。日々の疲れも吹っ飛ぶというか。
稲垣:「三ツ矢出前授業」に参加して、本当にいろんなことを学べました。業務に関係するところでは「万全の準備」「チームの役割分担」そして「相手との信頼関係の構築」。参加して本当に良かったと思います。
小角:私は、子どもたちの常に疑問を持つ思考は積極的に取り入れたいと思いました。与えられた事実を受け止めて終わるのではなく、何をしたら良いのか疑問を持ち、これからの業務も持続的になるように努めたいと思いました。
大沼:環境教室が終わった後、先生にアンケートをお願いしているのですが、普段、授業では発表しない子や消極的な子が、すごく積極的に話をしていました、というコメントが見られたりします。こういった意見もすごくうれしいですね。我々と子供だけでなく、先生方にとっても気付きのチャンスがあるんだ、というのは意外な発見でした。
小角:講師を終えたあと、実は自分で「三ツ矢サイダー」を買ったんです。子どもたちと同じ気持ちになりたくて。あのときほど美味しい「三ツ矢サイダー」は後にも先にもなかったですね(笑)。
※所属・仕事内容は取材当時