研究ノート
STUDY NOTE
なるほど!がいっぱい
研究ノート
Vol.9
「ワンダ」の飲用前後での
気持ちの変化を科学する!
~研究開発担当者インタビュー~
「ワンダ」を飲むことで気持ちをONにできるのか?
アサヒ飲料では清涼飲料を飲んだ時のおいしさに加え、“ココロの動き”にも着目した研究を行っています。研究ノート Vol.5では、飲用の前後で得られる気分の客観的な信号データを取得・組み合わせて解析することで、「その人が今、実際はどんな気分なのか」を数値化しました。その結果、「モーニングショット」を飲むと「前向きな気分」※1が増すという1つのデータを導き出すことに成功しました。
今回(Vol.9)は、理化学研究所片岡洋祐先生(理化学研究所生命機能科学研究センター、医学博士)の指導の下、感性評価システム「KOKOROスケール」※2を用いて、「ワンダ」ブランドの飲用前後でココロの動き“を調査しました。その結果、「ワンダ」飲用により、気持ちを“前向き”にする効果が可視化され、「ワンダ」がお客様に提供している“おいしさ”以外の価値も持つことが明らかになってきました。その研究結果をお届けします。
※1「前向きな気分」:積極的な気分やスッキリとした気分など、一般にいうポジティブな考え方や心境のことを表現しています。
※2「KOKOROスケール」とは、国立研究開発法人理化学研究所生命機能科学研究センター片岡洋祐チームリーダー(医学博士)らが開発した主観的気分測定ツールです(詳細は後述)。
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INTERVIEW 01
「ワンダ」の情緒的価値を科学で証明して、自信を持ってお客様に届けたい
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INTERVIEW 02
「ワンダ」飲用前後の気持ちの変化が「KOKOROスケール」で判明
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INTERVIEW 03
「 『ワンダ』 モーニングショット」の「赤」は、「前向きになれる赤」
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RESEARCH SUMMARY
研究のまとめ
INTERVIEW 01
「ワンダ」の情緒的価値を科学で証明して、より一層自信を持ってお客様に届けたい
アサヒ飲料(株)
マーケティング本部
マーケティング一部
コーヒーグループ
河口 文彦
Q.いろいろな缶コーヒーがある中で、「ワンダ」はどんなコーヒー?
コーヒーは、ライフスタイルに寄り添った飲み物だと考えています。一日の生活の中で、さまざまな感情の変化が何度もありますが、「ワンダ」は、気持ちをONにしたいタイミングで側にいるようなコーヒーを目指しています。この思いを「ワンダ」のブランドステートメントとして、次のように表現しています。
「ワンダ」は、人生をwonderfulにするコーヒー。
wonderfulな人生とは一瞬一瞬を
大切に積み重ねること。
一日に何回もあるはじまりの瞬間に
あなたの気持ちをONにして
前向きにするコーヒー「ワンダ」。
このステートメントの下、マーケティングの部署では、「ワンダ」のブランド価値について見直しました。
Q. 「ワンダ」の各商品がもたらす価値は、それぞれ異なる?
「ワンダ」ブランドの商品群は、それぞれ価値(魅力)が異なり、お客様がコーヒーを飲むシーンをイメージしながらつくっています。例えば、赤色の缶でおなじみの「『ワンダ』 モーニングショット」は、一日の気持ちをONにしたい朝一番に飲む朝専用。「『ワンダ』金の微糖」は、気持ちを少し贅沢にしたいタイミングで飲むコーヒー。「『ワンダ』特製カフェオレ」は午後などに一息つき次に向かうタイミング。「『ワンダ』ブラック」は、リフレッシュ、気分転換、気持ちの切り替えのタイミングで飲むコーヒーです。それぞれ飲用シーンを設定していますが、「一歩を踏み出すきっかけをくれる」という前向きな情緒的価値は、共通しています。
Q.「前向き」を大事にする理由は?
いいパフォーマンスを生むにはポジティブな感情が不可欠です。私たちは、ポジティブな感情を「前向きな気持ち」と捉えなおし、「前向き」に気持ちが動くことで、一日が充実したものになると考えています。この理由から、「ワンダ」では、「前向き」という価値を大切にし、お客様に訴求するメッセージのキーワードに据えてコミュニケーションを行っています。
「ワンダ」は、一歩を踏み出すきっかけとなる「前向きな気分」を提供するコーヒーとして、味わいやパッケージデザイン、広告などのコミュニケーションによるイメージづくりを行っていますが、実際に、その価値をお客様に届けられているのかを知りたいと思いました。 そこで、今回、「ワンダ」の情緒的価値を証明するために、「KOKOROスケール」を用いた研究を行いました。
INTERVIEW 02
「ワンダ」飲用前後の気持ちの変化が
「KOKOROスケール」で判明
アサヒ飲料(株)
研究開発本部
商品開発研究所
商品開発第二グループ
課長補佐
初川 淳一
Q. 「KOKOROスケール」って、どんな試験?
個人の気分をタッチパネルなどで簡単に入力して数値化できるシステムです。安心感と不安感、ワクワク感とイライラ感などの相対する気分を横軸および縦軸に配した4象限マトリクスで、被験者はその時、その瞬間の気持ちにあてはまる部分をタッチします。選択肢や記述など言語を使用しない直感的な回答方法により、微妙な気持ち(心)の変化をキャッチして、数値化できるのが特徴です。
「KOKOROスケール」を使用した試験の様子
今回は、「ワンダ」ブランドの主要4商品である「『ワンダ』 モーニングショット」「『ワンダ』 金の微糖」「『ワンダ』 特製カフェオレ」「『ワンダ』 ブラック」を対象に、飲用前後で気持ちがどのように変化するのか調べました。 試験@では、味自体が気持ち(心)にどのような影響を及ぼすかを把握するため、商品名やパッケージデザインなどを隠した「ブラインドテスト」を実施。続けて、試験Aでは、商品のパッケージを見せた状態で同様の試験を行いました。試験@とAの差からは、パッケージデザインやブランディングが、お客様の気持ち(心)にどの程度影響を及ぼしているのかを知ることができます。
Q. 試験結果から、判明したことは?
試験@、Aから「パッケージデザイン(商品名を含む)の提示・不提示にかかわらず、今回試験した『ワンダ』ブランド4品は頭の冴え感がアップする」ということが確認できました。さらに、 パッケージデザイン(商品名を含む)を提示することで、冴え感だけでなく、全てのカテゴリーで気分が晴れやかになる傾向があることが確認できております。
さらに、ミルク入り3品に注目し、試験@、Aの結果を解析し直した結果、「銘柄を提示した場合、頭が冴え、気分が晴れやかになるだけでなく、元気な気持ちになる」ことも分かりました。このように、味わいやパッケージデザインが気持ちに影響を及ぼすことが分かってきました。
「KOKOROスケール」を使用し測定した、飲用前後の気持ちの変化の一例(銘柄提示)
(株式会社Kokoroticsの協力のもとに測定)
Q.「ワンダ」は気持ちを前向きにしてくれることが証明できた?
商品を開発するとき、今までは「気持ちを前向きにする」「明るくする」というイメージ(こうなるだろうという想定)でしかありませんでしたが、今回、「KOKOROスケール」という感性評価システムを用いてデータを取得することで、「ワンダ」が気持ち(心)にもたらす変化を数値化・可視化して、評価することができました。 試験により、「ワンダ」ブランド4品全てで冴え感がアップし、さらに晴れやかな気持ちになる傾向が見られたことから、前向きな気持ちへの切り替えにつながっている可能性があると言えます。さらに、「ミルクが含まれる製品は〇〇だ」とか、「『モーニングショット』、『金の微糖』にしぼると〇〇だと言える」というように、製品やその特徴によって気持ち(心)の動き方が異なることも分かっており、今後さらに深く考察していきたいと考えています。 また、例えば、ミルク入りの中でも甘さが感じられる「モーニングショット」と「カフェオレ」については「コーヒー感がよければよいほど、気持ちが元気になりやすい」「後味が良ければよいほど、頭が冴える感じがする」という可能性が示唆されるなど、風味と心の関係も少しずつ見えてきています。今後も研究・調査を重ね、商品開発につなげていきたいです。
INTERVIEW 03
「『ワンダ』 モーニングショット」の「赤」は、
「前向きになれる赤」
アサヒ飲料(株)
マーケティング本部
宣伝部 デザイングループ
主任
杉山 由希子
Q.「ワンダ」ブランド全体のデザインの特徴は?
「ワンダ」ブランドが、お客様に提供したい価値は「お客様の気持ちを前向きにする」ということです。また、お客様に「ワンダ」のイメージをお尋ねすると、他の缶コーヒーブランドと比べて、「前向きになれる」「気持ちが少し明るくなる」というご意見が見受けられます。このお客様のイメージを維持しつつ、「ワンダ」の「前向き」という価値を、ブランドを通してさらに高められるようにデザインしています。
「ワンダ」ブランド全体のイメージに加え、それぞれの商品が持つ特徴もデザインで表現しています。例えば、「『ワンダ』 モーニングショット」は、「朝の仕事に行く前にすっきりしたいな」という瞬間に飲んでいただいており、「 『ワンダ』 極 」は、「仕事の合間にちょっとリラックスしたいな」という瞬間に飲んでいただいています。この飲むときのシーンや気持ちに合うことも、デザインで大事にしています。時代に合わせて、アサヒ飲料が「ワンダ」を通して提供した価値は、少しずつ異なっています。それは、パッケージのデザインにもあらわれています。
Q.「『ワンダ』 モーニングショット」の「赤」は、特別な赤?
2019年から展開している「 『ワンダ』 モーニングショット」の現行デザインは、商品として訴求する要素をしぼり、原点に立ち返って「朝にすっきりと飲んでもらえる朝専用『ワンダ』 」ということを前面に出しています。
「 『ワンダ』 モーニングショット」の印象的な赤色をはじめとした色合いについては、あまり曖昧な表現を使わず、「赤と金」という印象を、お客さんに強く伝えられるように意識しました。
今回、はじめてAI技術を用いて、商品のベースとしている赤色を改めて選定しました。「どういう色が前向きになれるか」を知るために、お客様に「前向きになれる言葉」をお聞きし、AI技術で言葉と色(赤)を結びつけました。その結果、AIが「前向きな赤」として導き出したのが、今の「 『ワンダ』 モーニングショット」に使われている赤色です。選択した後も、「その赤色で本当に前向きになれるのか」ということを、科学的アプローチで測定しており、これまで以上にブランドイメージに合う最適な赤が発見できました。
「ワンダ」の赤色は、その時の目的に合わせてより暗い赤を選択したり、黄色っぽくしたりと、少しずつ変化しています。今回は、すっきりとした印象もありながら色の深さもある落ち着きのある赤になったと感じています。
Q.もう一つの主力商品「『ワンダ』 金の微糖」のデザインの特徴は?
「 『ワンダ』 金の微糖」についても、飲むシーンは仕事に行く前など、気持ちを切り替えたい瞬間です。特に、気持ちを盛り上げたい(高めたい)ときに選んでいただいているので、高品質な印象を大切にしました。手に取ったときに少し気持ちが高まるような品質感になっているのではないでしょうか。
また、豆にもこだわっているので、それがデザインからも伝わるように意識しています。デザインの全体的な世界観としても、金の缶にラベルが貼ってあるイメージで、高級感ある仕上がりにしました。金の色合いも、黒色と一緒になったときに映える金を選び、採用しました。
今回、「KOKOROスケール」を用いた試験により、「ワンダ」の味わいだけでなく、パッケージを含めたデザインについても、お客様の気持ち(心)に変化をもたらすことが判明しました。この結果をパッケージデザインを含めたコミュニケーションにも生かしていきたいと思います。
RESEARCH SUMMARY
研究のまとめ
「ワンダ」は、「前向き」という価値を大切にしてきました。今回、「KOKOROスケール」によって、「ワンダ」を飲むことが前向きな気持ちへの切り替えにつながっている可能性があることが、客観的に明らかになりました。
私たちは、“ひとりよがり”な商品開発ではなく、常にお客様の顔を想像しながら商品の開発に取り組んでいます。今回の研究もその一環で、「実際にお客様に元気になってもらえているのか?」というクエスチョンからスタートしています。今後も、私たちが開発している商品が、本当に狙った通りの仕立てになっているのかを確認しつつ、お客様にとってよりよい商品を開発していきます。
注)組織名、商品名、商品画像は取材時のものです
関連ページ : Vol.5 気持ちを科学する!
〜研究開発担当者インタビュー〜
理化学研究所 片岡先生のコメント
「KOKOROスケール」は、脳科学や心理学研究、行政サービスの向上、企業の商品やサービスの評価、売上や顧客満足度の改善、働き方改革などで活用されています。今回は、様々なカテゴリーの缶コーヒーを飲用した時に感じる主観的な気分の変化を数値化することができました。また、各種コーヒーの味わいと気分の関わりやパッケージのデザインが気分に与える影響についても数値化することができ大変興味深い知見が得られてきました。「KOKOROスケール」は、時間や場所を選ばず、気分の変化を継続的かつ大量のデータとして簡単に取得することが可能であり、ユーザーが商品・サービスを利用した際に感じる主観的な気分や、その変化を手軽に可視化することが出来ます。そのため、今後も様々な分野での活用が期待されています。
片岡 洋祐
国立研究開発法人理化学研究所
生命機能科学研究センター
細胞機能評価研究チーム
チームリーダー 医学博士
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