研究成果 2006年 レポート
バナジウム含有天然水は耐糖能障害を改善するか−KK-Ayマウスを用いた形態学・分子生物学的研究から−
2006年 第79回日本薬理学会年会
今、最も市場が活性化されているミネラルウォーター市場。富士山周辺の地下水から汲み上げられたミネラルウォーターの中に、遷移元素の一種である「バナジウム」を含有しているものがあります。バナジウムは、富士山の溶岩である玄武岩の中に多く含まれており、富士山に降った雨や雪が長い年月をかけ、玄武岩の中のバナジウムを溶解し、高濃度(試験に使用したミネラルウォーターは62μg/L含有)のバナジウム含有天然水になります(他の多くのミネラルウォーターや水道水にはほとんど含まれていません)。
このバナジウムに糖尿病改善作用があることが1985年に報告され、バナジウムを含有する天然水にも有効性があることが知られるようになり、アサヒ飲料でも積極的にバナジウムの研究を進めています。U型糖尿病のモデルマウスであるKK−Ayマウスに「バナジウム含有天然水」または、五酸化バナジウム水溶液を3ヶ月投与(自由摂取)したところ、筋肉や肝臓において血中から取り込まれた糖を輸送するたんぱく質「グルコーストランスポーター」が増加し(図1)、脂肪組織や肝臓ではインスリンレセプターが増加しており(図2)、血中からの糖の取り込みの促進が示唆されました。またインスリンを生産する膵臓の状態が改善されている(図3)など、耐糖能障害を改善する可能性が推察されました。そしてマウスの体重増加抑制作用が見られる(図4)など、メタボリックシンドロームへの効果にも期待が高まってきました。これからもバナジウムの作用機作の解明、ヒトでの効果の検証も進めて参ります。
バナジウムを含有した富士山の溶岩
図1・U型糖尿病モデルマウスにバナジウム含有天然水を3ヶ月間飲用させることで、筋肉・肝臓のグルコーストランスポーターが増加した。
図2・U型糖尿病モデルマウスにバナジウム含有天然水を3ヶ月間飲用させることで、脂肪組織・肝臓のインスリンレセプターが増加した。
図3・U型糖尿病モデルマウスにバナジウム含有天然水を3ヶ月間飲用させることで、膵臓の状態の回復が見られた。
図4・U型糖尿病モデルマウスにバナジウム含有天然水を飲用させたところ、プラセボ(蒸留水群)に比べ有意に体重の増加が抑制された。